可能性を秘めた国産の天然皮革

サメ革可能性を秘めた国産の天然皮革

皮革製品の原皮の多くが海外から輸入される中で、サメ皮は国内生産できる原料。
国内では2社というサメ皮の加工会社のうち、長野県飯田市のレプトシャークを訪れた。

2014年発行 「日本の革 7号」より

「獰猛なイメージのサメだけど、革はこんな上品なのかと、そのギャップに一番惹かれましたね」
そう語るのは、レプトシャーク取締役の中川武人さん。ポケットから取り出されたサメ革の名刺入れは気品を放っている。一日に数百枚のサメ革の選別をこなすスタッフは、続けてこう語る。
「牛革のような知名度はないし、オーストリッチのような派手さもない奥ゆかしい革ですが、銀面には美しいシワ模様が刻まれ、しっかり自己主張をしているんです」
サメ革の原皮は、全国一のサメの水揚げ量を誇る宮城県気仙沼市の漁港からやってくる。漁港は2012年の東日本大震災で大打撃を受けたが、中川さんは元から取引があったサメの加工業最大手ムラタの村田さんとタッグを組み、サメ皮専門の加工会社「レプトシャーク」を2013年に立ち上げた。現在は長野県の工場で加工しているが、地場産業として気仙沼の復興につながるように、将来的には気仙沼にも工場を建てる予定だ。
昔からサメ皮は利用されており、今ではより技術が発展し、しなやかで軽く、丈夫な皮革素材となっている。

サメというと数メートルの巨大な胴体が思い浮かぶが、使用しているのは「ヨシキリサメ」という中型のサメ。中華料理の高級食材であるフカヒレとして知られている。オスとメスで違いがあり、オスはメスより胴体が一回り小さく、模様が細かくキレイ。メスの中には複数の傷がついている個体もあるが、これは繁殖の際にオスザメから噛み付かれるため。中には死に至る場合もあり、サメの繁殖はまさに命がけであることを物語っている。サメは水揚げしてカギ棒で運ばれる際にも傷が付きやすく、革として利用できるものは水揚げ量の約一割程度となる。
なめしの工程は牛革とそれほど違いはないが、鱗を取る工程が必要となる。革の性質としては、牛と違い毛根がないので水を通しにくく、水に濡れても縮みにくい。
「革製品の原皮の大半が海外からの輸入である中、サメ革は日本で原皮として調達できる数少ない皮。しかも家畜と違い、海で自然に育った天然の原料で希少価値がある。今は国内需要がほとんどですが、今後はもっと海外へ輸出していきたいですね」と中川さんは意気込む。
気仙沼の復興、そして海外への輸出――。サメ革は可能性を秘めた、日本の革なのだ。

メスザメの革。表面の傷は、繁殖の際にオスザメから噛み付かれた跡。命を生み出すための激しいドラマが伺える。

なめして乾燥した後のサメ革。フカヒレとして背びれがカットされる影響で、使用面積は限られる。


サメ革ができるまで

サメ革のなめしの特徴は、鱗を落とすことと、漂白すること。鱗は目の流れと逆方向に触るとザラつきがある。鱗は塩酸の中に漬けて取り除き、残った黒色を漂白する。なめし剤は、サメ本来の模様を強く出せるという、タンニンを使用。植物由来なので海外に受け入られやすいメリットもある。その後、山と谷の模様に合わせて塗装を施す。

冷凍された状態で届いた原皮を、解凍して生皮の状態に戻し、塩漬けにする優さん。

染色した後、模様の谷の深い部分にも色が入るよう、さらに手作業で塗装する。

右上は染色をしたベースに、模様の盛り上がった部分に塗装をする「頭張り」、左下は塗装した後拭き取りをし、谷の部分に色を残す「ワイプ」という手法を使用。

カラフルな塗装が可能になり、需要が伸びている。