皮から革になる工程

なめし皮から革になる工程

偏に革、旁に柔で鞣し(なめし)。
読んで字のごとく、原皮を素材として使えるように加工することを指す。
今回は、山陽の塩田和也さんになめしの工程をガイドしてもらった。

2014年発行 「日本の革 7号」より

皮はなめしという工程を経て革になる。元々は皮膚であった皮のコラーゲン繊維になめし剤を結合させ、しなやかさを持つ素材の革に仕上げる。皮革製品の原皮は海外からの輸入がほとんどだが、なめしを行うタンナーは国内に多数存在する。現在、なめしの方法は、植物由来成分のタンニンなめしと、塩基性硫酸のクロムなめしの2つが主流。なめし剤に使う薬品の調合で革の出来栄えが大きく変わる。
なめしの大まかな工程はどのタンナーでもほぼ同じだが、所々に差異があり、その差異がオリジナリティにつながる。

たとえば、今回ガイドをお願いした山陽では、なめしの工程が終わってから背割りを行っている。同社の塩田さんは、「この方が床面を大きく取れて効率がいいんです」と話してくれた。
近年は、クリエイターやデザイナーが直接タンナーに足を運んでオーダーを出したり、タンナーが企画して自ら製品をつくるケースも増えている。それぞれが独自のレシピを持ち、これまで蓄積してきた技術で革に命を吹き込むなめし。その卓越した技は、知っておいても損はないだろう。

クロムなめし

なめし剤に塩基性硫酸クロムを使うなめし方。タンニンと比べ、短期間でなめしができる。発色が良く、伸縮性や耐水性にも優れている。また、やわらかく加工しやすい。衣料用に使われる革はクロムなめしのものが多い。

タンニンなめし

古来より行われてきた植物の渋を使うなめし方。全工程を終えるまで数週間かかるケースもある。仕上がりは堅牢で、紳士鞄などに使われる。染料の吸収も良いが、タンニンそのものの色が付いたヌメ革も味わいがある。

1. 下準備

[原皮〜石灰漬け]

原皮は海外からの輸入がほとんど。腐敗を防ぐため、塩漬けにされた状態で入って来る。なめす前にはドラムで洗って塩分と汚れを落とし、水分を与える。水戻しを終えたら石灰漬けで繊維をほぐす。作業効率を上げるため、大型の皮は下準備の段階で背骨に沿って半裁する。

2. なめし

[なめし〜染色・加脂]

下準備が完了したら、いよいよなめしの工程へ。なめし剤を皮に浸透させ、耐熱性・耐久性を与える。なめしはドラムで行う方法と、ピットに漬け込む方法がある。なめした後は余分な薬剤を洗い流す。必要に応じて染色し、脂分を加える。このあとの処理は仕上げによって変わる。

3. 後処理

[セッティング〜乾燥]

セッターを使って余分な水分を取り除くと同時に、これまでの工程で縮んだ部分を引き伸ばす。革に応じてさまざま方法で乾燥させたあとは、適当な水分を与えて揉みほぐし、柔軟性・弾力性を与える。起毛革の場合はサンドペーパーがけをする銀むきという工程が必要となる。

4. 仕上げ

[塗装〜検査・出荷]

塗装は染料に漬け込む方法とスプレーで顔料を吹き付ける方法がある。塗装によって革に耐久性・撥水性が付加される。塗装後は、最終的な仕上げへ。機械を使って革の表面に艶を与え、アイロンをかけてより美しくする。必要があれば型押しも行い、最後に検品して出荷する。